静電気の対策
3-7 イオナイザー(除電器)のコスト
導入から運用までトータルで考える必要がある
イオナイザー(除電器)の購入を検討する際に考慮するのが価格ではないでしょうか。価格が幅広いイオナイザーですが、そのものの値段だけでなく運用を踏まえた選択を試みることをおすすめします。安く導入したことで、運用費がかえって高くつくことがあるからです。そこで、イオナイザー選びに注目したい4つのポイントをご紹介しますので、購入する際の検討材料になれば幸いです。1) 導入費
製品自体の価格
2) 消費電力費
本体の消費電力、ファン動作や圧縮空気生成に必要な消費電力にかかる費用
3) 消耗品費
放電針や放電針清掃に用いる消耗品、圧縮空気のフィルタ交換費用
4) 修理費
イオン出力が劣化、もしくは停止した場合の修理費用
1)導入費
イオナイザー(除電器)の種類は様々で、形態や性能で価格は様々です。作業台に設置するデスクトップタイプや、局所的な除電が可能なノズルタイプのような、小型の簡易タイプでは数万円からです。また、広範囲を除電する場合はバータイプが最適ですが、長尺のものでは数十万円するものまであります。 防爆認定品のように、特殊な構造を有するものは更に高額になる場合もあります。
イオナイザーの性能と導入費に対する一般的な考え方は以下の通りです。
イオナイザーの性能と導入費に対する一般的な考え方は以下の通りです。
イオナイザーの性能 | 導入費の傾向 |
除電速度が速い (発生イオン量が多い) |
同じ条件であれば、発生可能なイオン量が多いほど除電速度が速くなるので価格は高くなります。 ただし、チャージプレートモニタ(除電効果と精度を測定する機器)で測定する除電速度は1つの条件での値なので、発生イオン量、つまり実際の生産現場での除電能力とは異なる可能性があります。その点注意が必要です。 |
除電可能エリアが広い (有効面積・体積が広い) |
微小エリアを除電するスポットタイプは価格が安く、反対にバータイプのように放電針が並び広い範囲を除電できるイオナイザーほど価格は高くなります。放電針の数が多いと、その分の設計の工数も多くなるのが理由です。 無風かつ空間タイプのイオナイザーは空間全体を除電できますので、新しい価値を提供可能です。 |
イオンバランスが高い (除電精度が高い) |
特に静電気に弱い半導体、電子部品では高いイオンバランス性能が要求されます。高度なセンサーや制御方法が必要になるため価格は高くなります。 |
耐久性が高い | イオナイザーは高電圧機器なので、漏電のリスクを抑えるための構造や材質が重要です。 |
メンテナンス性が高い | メンテナンス性(頻度、容易さ)を高めるための構造・機能が充実しているほど価格は高くなります。 |
特別な環境に対応 | 特別な環境に対応するための材質変更、機能追加、認証費用等で価格が高くなります。 例)窒素環境用、高温環境用、防爆エリア用、他 |
2)消費電力費
実はどのイオナイザー(除電器)も、イオンを発生させるためのコロナ放電を起こす消費電力は小さいです。ですが、イオンを届けるためのファンや圧縮空気を生成するためのコンプレッサーを使用すると、消費電力が大きく異なります。 特に圧縮空気を生成するための消費電力費用は、1年で新しいイオナイザーを購入できるほど費用がかかるので、見落とさないように注意が必要です。反対に無風イオナイザーであれば、圧縮空気を使用しませんので電気代はほとんどかかりません。
3)消耗品費
イオナイザーの放電針(放電電極)は継続使用する中で摩耗するため、その場合には針交換が必要になります。放電針は、材質や本体へ取り付けるための構造によって価格が変わります。例えば、半導体分野で金属発塵を避けるために使われることの多いシリコン製の放電針は、他材質の針と比較して価格が高くなります。また、圧縮空気を使うイオナイザーは放電針のマウントが流路の一部となるため構造が複雑になり価格が高くなりやすいです。
一方で、価格を抑えるために放電針を交換するための機構を排除したイオナイザーもあります。この場合は、本体自身が消耗品になるので、イオナイザーを継続して使うことを前提に放電針が交換可能な設計かチェックしましょう。
放電針にかかる費用という観点から考えると、清掃にかかる費用も考慮しなければなりません。イオナイザーは放電針に高電圧を印加するため、使用とともに先端が摩耗したり周囲のホコリを吸い寄せたりします。先端にホコリが溜まるとイオン発生量や正負イオンのバランスが低下してしまうため、定期的に放電針を清掃する必要が生じます。イオナイザーによっては清掃が非常に大変で時間がかかるものがあるので、その場合には清掃にかかる人件費を考慮しなければなりません。長尺のバータイプイオナイザーのように放電針の数が多い場合や、人の手が届きにくい場所に設置している場合、特にイオナイザーが大量に使用されている工場においては、清掃にかかる人件費を事前に検討する必要があります。
最後に、放電針以外の消耗品を考えます。圧縮空気を用いる有風イオナイザーの場合はドライエアが必須なので、定期的なエアフィルター交換が必要です。
一方で、価格を抑えるために放電針を交換するための機構を排除したイオナイザーもあります。この場合は、本体自身が消耗品になるので、イオナイザーを継続して使うことを前提に放電針が交換可能な設計かチェックしましょう。
放電針にかかる費用という観点から考えると、清掃にかかる費用も考慮しなければなりません。イオナイザーは放電針に高電圧を印加するため、使用とともに先端が摩耗したり周囲のホコリを吸い寄せたりします。先端にホコリが溜まるとイオン発生量や正負イオンのバランスが低下してしまうため、定期的に放電針を清掃する必要が生じます。イオナイザーによっては清掃が非常に大変で時間がかかるものがあるので、その場合には清掃にかかる人件費を考慮しなければなりません。長尺のバータイプイオナイザーのように放電針の数が多い場合や、人の手が届きにくい場所に設置している場合、特にイオナイザーが大量に使用されている工場においては、清掃にかかる人件費を事前に検討する必要があります。
最後に、放電針以外の消耗品を考えます。圧縮空気を用いる有風イオナイザーの場合はドライエアが必須なので、定期的なエアフィルター交換が必要です。
4)修理費
イオナイザーは高電圧機器であり、高電圧設計に問題がある場合は漏電して故障するリスクがあります。例えば、エアを使うタイプのイオナイザーでは、エア流路と高電圧が接しているためエアに含まれる湿気が結露となって漏電が発生するリスクがあります。
また圧縮空気を用いる有風イオナイザーの場合は、エアの品質が悪いと漏電して故障するリスクがあります。 よって、高電圧とエア流路が同じ場所にない構造のイオナイザーを推奨します。
また圧縮空気を用いる有風イオナイザーの場合は、エアの品質が悪いと漏電して故障するリスクがあります。 よって、高電圧とエア流路が同じ場所にない構造のイオナイザーを推奨します。
まとめ
以上のように、イオナイザーは形態、基本性能に加えて、運用に関わるいくつかの性能を考慮して選定する必要があります。安いからと言って調査が不十分な状態で安易に採用してしまうと、思った通りの除電能力が得られなかった、すぐに壊れてしまったといった問題に巻き込まれてしまう危険性があります。 結果、修理や買い替えが必要になったり、さらに悪いケースとしてイオナイザーの故障により副次的に想定しない費用がかかってしまったという事態になりかねません。それを避けるために、ご自身の工程に必要な性能と運用方法をトータルで検討することが重要です。
1)導入費
除電速度、除電の有効面積、除電精度、耐久性、メンテナンス性が高いとその分高価になる傾向にある
あるいは、特別な環境に対応したイオナイザーは高価になることも
あるいは、特別な環境に対応したイオナイザーは高価になることも
2)消費電力費
コンプレッサーを使用すると高価になる
3)消耗品費
清掃を想定してイオナイザーを選択する
4)修理費
故障しにくい、高電圧とエアが別の位置に設計されたイオナイザーがおすすめ
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この記事を書いたのは
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監修 経歴 |
高柳 順 名古屋大学大学院工学研究科量子工学専攻卒(工学博士)。専門は量子工学・応用物理学。名古屋産業科学研究所研究員やアイシン精機(現アイシン)を経て、株式会社TRINC(トリンク)現社長。 |
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