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静電気の対策

3-7 イオナイザー(除電器)のメンテナンス


 

1 イオナイザー(除電器)の点検・清掃は必要か?

みなさんはイオナイザー(除電器)の点検・清掃を行っていますか?点検・清掃を行わないと発生するイオンの質が劣化し、期待する除電効果が得られなくなってしまいます。あるいは故障に繋がり、最悪火災事故に発展する場合がありますので、定期的にイオナイザーが正しく作動しているか点検し、内蔵の放電針の清掃を行う必要があります。

 

2 イオナイザ―(除電器)の清掃頻度

イオナイザ―(除電器)の放電針(電極針)の清掃は、機種、使用状況、使用環境にもよりますが、2週間に1回程度の頻度での実施が推奨されています。イオナイザーは、空気をイオン化するためにコロナ放電を発生させています。その際に、放電針(電極針)に高電圧を印加するため、ホコリを吸い寄せてしまいます。先端にホコリが溜まるとイオン発生量や正負イオンのバランスが低下してしまうため、定期的に放電針を清掃しなくてはなりません。
 また、清掃する際に放電針の先端にも注目してください。長時間使用することで針の先端が丸くなります。これは交換のサインです。放電針がイオンを生成するときに、逆極性のイオンの放電針への衝突が起こり、放電針の先端が減耗していきます。先端が丸くなると針先端部付近の電界の歪が小さくなりコロナ放電の効率が下がるため、イオンの発生量が低下し除電能力が劣化してしまいます。加えて、放出するプラスイオンとマイナスイオンの量のバランスが崩れて、精度よく静電気を中和することができなくなってしまいます。イオナイザーの清掃は定期的に行い、放電針の状態をチェックするのが重要です。
 


 
 

3 イオナイザー(除電器)の清掃方法

イオナイザー(除電器)を清掃する際の方法はいくつかあります。コロナ放電によって吸い寄せた小さな異物を除去するために、ブラシで擦ったり、アルコールで浸した綿棒を使って放電針に付着した汚れを落とすのが一般的とされています。
 しかし、イオナイザーの清掃で困る点がいくつかあります。以下に、その例を挙げます。

 

膨大なメンテナンス時間(人件費)の浪費がかかる

一般的なイオナイザーの放電針の清掃は、針を1本1本取り外してから実施します。特に長尺のバータイプのイオナイザーでは、1本当たりの放電針の数が数十本にもなるため、それら一つ一つを取り外して清掃するには膨大な手間と時間がかかります。フィルム工場、ガラス工場等では、このイオナイザーが何百本も使用されている場合があります。これら全ての放電針を1本1本メンテナスするのは気が遠くなる作業といえます。
 当然、清掃している間は工場を停止させなければならないため、その時間帯の生産はストップします。清掃も定期的に行わなければならないため、この停止時間の蓄積は計り知れないものになるでしょう。


 
 

設置場所によって清掃が実施できないことがある

定期的にイオナイザーの清掃を行わなければならない一方、設置場所によっては清掃が困難な場合があります。代表的な例が、機械設備の内部に設置している場合です。特に、手が届きにくい位置にイオナイザーが設置されている場合には、ブラシで放電針を清掃する際にかなり苦心するという声がよく聞かれます。さらに、針は複数本あるため、位置によっては十分な手入れが行き届いていない可能性が高いです。さらに悪い状態は、イオナイザ―が目に見えない場所に設置されており、その存在すら認識されずに一切メンテナンスを施されずに異常な状態で動作を続けている場合です。針先に付着した異物を製品に向けて撒き散らす、性能の劣化したイオンが製品を逆に帯電させてしまうといった状況に陥っていることが予想されますので、必ずイオナイザーの状態を定期的に確認するようにしてください。
 装置内だけでなく、清浄度が高い環境や危険な環境で作業者が普段アクセスできない場所にイオナイザーが設置されている場合には、イオナイザーを触る機会が限られるためメンテナンスが行き届かない状況に陥りやすいです。これらの条件下では、エラーが出た際に限って針メンテナンスが実施される場合が多くなりがちですが、上記の理由から定期的なメンテナンスが推奨されています。

 

放電針の清掃・交換が困難なイオナイザーの構造 

そもそもイオナイザーの構造に問題がある場合があります。放電針を取り外せない設計や、取り外すのが困難な設計の機種がそれに該当します。これもまた点検・清掃が十分に行うことができずすぐに故障へと繋がってしまいます。価格があまりにも安い機種や一部の防爆認定イオナイザーでは、耐久性、メンテナンス性の観点で設計に問題があるケースも少なくありません。
 このようなイオナイザーでも、購入した直後には除電効果が確認できる場合が多いです。しかし、使用を継続する中で徐々に効果が薄れて、最終的に全くイオンが出ない状態に陥いってしまう可能性があります。この場合には、単にイオンが出ないというだけにとどまらず、逆に製品を帯電させてしまう、異物を付着させてしまう、漏電のリスクがあります。
 静電気・異物対策を整え、安定したものづくりに専念するには、イオナイザーが安定的に高い効果を発揮し続ける必要があります。したがって、イオナイザーを選定する際には価格や基本性能だけでなく、メンテナンス性能についてよく調べたうえで、設置後の使用シーンを考えて選択しましょう。放電針の清掃が容易に行えるかどうか、放電針の交換が容易に行えるかどうか、漏電して内部が損傷を受けやすい構造になっていないかを必ず確認してください。

 

 コラム       放電針先端の異物はエアで飛ばしてしまえば針清掃は必要ない?
以上のように、イオナイザーの放電針のメンテナンスをすることはそもそも困難だから、発想を変えて放電針に付着した異物とイオンを飛ばすためのエアで一緒に吹き飛ばしてしまえば針先に異物はとどまらないと考えるイオナイザーがあります。針先の異物は確かに吹き飛ばされることになりますが、これは放電針の摩耗により発生した異物がエアによって常時ワークに吹き付けられている状態なので、深刻な異物問題を誘発する可能性があり注意が必要です。
 また、エアを使用するイオナイザーでは、圧縮空気の品質が悪いと放電針周辺で含有する水分が結露し現れ内部に付着してしまうという別の問題を引き起こす可能性があります。高電圧が印可される放電針周辺の絶縁性はイオナイザーに不可欠です。これが少しでも劣化すると、放電針に印可された高電圧は漏電を引き起こし、イオン出力の低下、その先には製品の故障や火災事故のリスクが伴います。漏電は樹脂部の炭化を引き起こすため、針交換では済まず本体を丸ごと交換する必要が生じます。
 イオンを運ぶのが容易、針先の異物を吹き飛ばすのに都合がよいという安易な理由でこのタイプの有風イオナイザーを選択するのは注意が必要です。

 
 
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この記事を書いたのは
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監修
経歴
高柳 順
名古屋大学大学院工学研究科量子工学専攻卒(工学博士)。専門は量子工学・応用物理学。名古屋産業科学研究所研究員やアイシン精機(現アイシン)を経て、株式会社TRINC(トリンク)現社長。
   

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