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静電気の対策

3-1 静電気対策の種類



静電気対策の種類は大まかに分けると7通りあります。 
  1. 導電線を用いてアースする方法 
  2. 導電性のある布で拭く方法 
  3. 導電剤を混入する方法 
  4. 界面活性剤を塗布する方法 
  5. 水拭きする方法 
  6. 加湿する方法 
  7. イオナイザー(イオナイザ - 除電器)で静電気を除去(除電)する方法 

たくさんありますね。順に追ってみてみましょう。 
 

導電線を用いてアースする方法 


まず、除電対象物が導体か絶縁体かのどちらかで除電方法が変わります。 
 

a.除電対象物が導体の場合 

除電対象物が導体の場合または除電対象物の表面がメッキまたは蒸着によって導体になっている場合、除電対象物が湿気を帯びていたり、何らかの液体により多少の導電性を帯びている場合は、除電対象物を導電線でアースすれば、対象物に帯電していた電荷(静電気)はアース線(銅線)を通じて、電気を地面へ逃がします。 
目的に応じて除電方法が変わります。 

 
機械設備の除電 
機械設備の筐体は銅線でアースします。 これは機械設備に溜まった静電気を除去する静電気対策のためのもので、同時に機械の漏電対策の効果もあります。機械の電装装置が何らかの理由で絶縁不良を起こした時、電装装置から機械の筐体に漏電が発生してしまいます。この場合、作業者など機械に触れる人間に電気が流れ、感電事故を起こす恐れがあります。 漏電が発生しても、筐体をあらかじめ銅線でアースしておき、人間に電流が流れることを防止します。 

 
ワーク(製品)の除電 
製品が導体の場合も、アースして静電気を除去することができます。 接地した導電体の電極を導体の製品に触れさせる。停止している製品は冶具等で触れさせることにより、アースさせることはできますが、動いている製品は接触子でアースさせることが必要です。接触により製品を傷める場合はこの方法を適用することは難しいでしょう。 

 

b.除電対象物が絶縁体の場合 

除電対象物が絶縁体の場合、導電線でアースしても、触れた部分の静電気しか放電できないため、全体の静電気を除去することはできません。なので、先ほど述べたようなアースする方法は絶縁体には効果がありません。 

  

導電性のある布で拭く方法 


これは先ほど述べた導電線でアースする方法と原理的には同じですが、導電性の布で触れるため、絶縁体の表面の除電も可能です。ただし厳密には布と対象物の面で触れた点のみの静電気が除去されて、触れなかった点の静電気は残留することになるため、面全体にわたる完全な除電はできません。 さらに布が対象物に触れる時に接触による静電気が発生し、製品に新たな帯電をさせるため、完全な静電気除去ができません。 
 一方、布側に発生した接触による静電気は、布が導体であるために即座に散逸し、人体を経由して地面へ電気を逃します。 

  

導電剤を混入する方法 


除電対象物の材料にカーボンなどの導電物質を混入し、導電性を持たせたものです。絶縁体も導電体になるので、静電気は伝導しアースへと流れます。 
 ただし除電対象物がアースから浮いている場合は、除電対象物の表面全体に散らばって帯電し、静電位テスターではあまりに低くて測定できないかもしれませんが、静電気がなくなる訳ではありません。その場合の表面の電荷分布は、その対象物が置かれた環境によって決まります。 この導電剤を混入する方法は製品の材料仕様を変更することになり製品設計にかかわるため、限られた場合にしか使われません。代表的な例としては半導体のトレーなどがあります。 

  

界面活性剤を塗布する方法 


 
絶縁体の表面に界面活性剤を塗布します。 界面活性剤を塗布すると表面が僅かに導電性を帯びるので、静電気は伝導し流れ去ります。表面がアースされていれば、静電気は地球に流れますが、地球から浮いていれば(アースされていなければ)表面全体に広がって分布して帯電し、静電位テスターではあまりに低くて測定できないかもしれませんが、静電気が完全になくなるわけではありません。これは先ほどの導体の場合と同じですね。 
 この場合、界面活性剤を塗布するためワークの表面に異物を塗ることになり、清浄性を必要とする製品には使用できません。また一旦、塗布しても時間経過と共に導電性能が劣化する上に、製品が他の物質と接触・摩擦することによって、折角塗布した導電剤が減耗・剥離されて導電性が低下します。 
 したがって界面活性剤を塗布することで、永久的に静電気対策が約束されるわけではないのです。 

  

水拭きする方法 


 
対象物を水に浸けた布巾で拭く方法です。 純水でない水は多少の導電性があるので、静電気はこの水を伝って流れ去ります。対象製品が水を入れる容器などで水拭きできる場合は適用できますが、一般的には水を嫌うため使用できないことが多いです。 
 

  

加湿する方法 


加湿は古くからの静電気除去方法です。特に広い工場全体に分布する静電気を除去したい場合に用いられてきました。 空気を加湿し湿度を65%以上にすると物体の表面が湿気を帯び表面に導電性が現れると、静電気は流失します。しかし材料によってバラつきがあり、加湿しても静電気が抜けないときもあります。ナイロンの静電気を取り除く際、湿度を80%にしても静電気は抜けなかった例があるように、材料によって効く場合と効かない場合があるので注意が必要です。 
 また、加湿するとしても空間全体の湿度を均一にする制御が難しく、随所に結露が発生しやすいです。結露が発生すると、次のような様々な問題が発生します。 
 
  • 塗装時、塗装ムラが発生する。
  • ベタツキホコリが付着する。 
  • 繊維や紙に黴が発生する。 
  • -機械装置が錆びる。 
  • 金型が錆びる。 
  • 半導体が傷む。 
  • 電子機器のコネクターやリレーの接点が接点不良になる。 
  • 紙の腰がなくなり、皺が発生する。 
  • 紙がベタつき、供給(給紙)エラーや機械詰まりが起きる。 
  • 食品工場では高温多湿により細菌が繁殖して不衛生になる。 


これらの問題を避けるためには結露を防止しないといけません。 気温が低いと結露することから工場内の気温分布を隈なく所定値に一定に保つ必要があり、空気を撹拌します。しかし、空気を撹拌すると逆にホコリを巻き上げてしまうので、かえってホコリ不良を助長してしまいます。 
 このように加湿は非常に取り扱いが難しいため、他に静電気除去の方法がない場合に限り、現在も用いられている方法です。 

  

イオナイザー(イオナイザ - 除電器)で静電気を除去(除電)する方法 


イオナイザー(除電器)という装置を用いて静電気を除去します。 イオナイザーは高電圧を用いて空気を電離して空気イオンを作ります。この空気イオンは+と-の両方の極性のものです。作ったイオンで除電対象物を覆い、除電対象物の+の静電気は-の空気イオンを吸引し、自ら消滅します。同じく-の静電気は+の空気イオンを吸引し、自ら消滅します。 
 この現象を言い換えると、通常、空気は絶縁体ですが、イオン化された場合半導体状になるため、除電対象物の表面に溜まった静電気は空気中に流失します。空気中に漏電すると言うこともできます。 
 以上がイオナイザー(除電器)を用いた、静電気除去の原理です。 
 
静電気を除去するイオナイザー(除電器)
バータイプ   デスクトップタイプ   ハンディタイプ

TAS-311 BAM
 
 
TAS-812 SMT
 
 
TAS-21 GCB

 
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この記事を書いたのは
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監修
経歴
高柳 順
名古屋大学大学院工学研究科量子工学専攻卒(工学博士)。専門は量子工学・応用物理学。名古屋産業科学研究所研究員やアイシン精機(現アイシン)を経て、株式会社TRINC(トリンク)現社長。
 

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