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付着異物を除去する

5-1 除塵におけるイオナイザの役割



 
製品・部品や設備・資材等に付着した異物を除去するためには、イオナイザー(除電器)を用いると効果的です。ここでは、異物が付着するメカニズムと異物除去に対するイオナイザーの働きを説明します。

 

ホコリは、「活性ホコリ」と「不活性ホコリ」の2つに分類できる



 
静電気を帯びていないホコリを「不活性ホコリ」、逆に静電気を帯びているホコリを「活性ホコリ」と名づけます。「不活性ホコリ」は静電気を帯びていない、もしくは帯電がわずかなホコリです。言い換えると、 外部と反応しないホコリです。このホコリは製品に付着せず、不良品をつくることもないので「良いホコリ」といえます。
 一方で、「活性ホコリ」は静電気を帯びているホコリです。活性ホコリの帯電の極性はプラスであったり、マイナスであったりします。中にはホコリのある部分がプラスの電荷を帯び、他の部分がマイナスの電荷を帯びているものもあります。活性とは自分に帯電する電荷が発する電気力線により外部へ影響したり、または外部から影響を受ける性格をいいます。実際の現場では この活性ホコリが製品に付着して 不良を発生させます。
 したがって、活性ホコリは「悪いホコリ」です。生産現場に存在するホコリが全て不活性ホコリ(良いホコリ)であれば話は簡単ですが、残念ながら多くのホコリは活性ホコリ(悪いホコリ)であるため、問題解決を困難にしています。
 身近にある例として、作業中に着用している服から糸くずが飛び出して、製品に引かれて走り出すという現象に遭遇したことはありませんか?そう、この糸くずも活性ホコリ(悪いホコリ)なのです。製品に近づくにつれて糸くずはさらに加速し、ついにはくっついてしまいます。この活性ホコリのやっかいな振る舞いは、クーロンの法則を考えると説明することができます。クーロンの法則の詳細つきましては、こちらをご覧ください。

 

活性ホコリに作用する静電気力(クーロン力)

静電気を帯びている活性ホコリを考えます。物体の表面の静電気とホコリに帯電する静電気が作用して、吸着したり反発したりします。両者が同極性ならばお互いに反発しホコリは近づかないのですが、両者が逆極性の場合は、お互いが引き合ってホコリは物体に捕捉されます。両者に作用する静電引力Fを式で表すと以下の式で表せます。




また、絶縁体の電荷により発生するホコリの地点での電解Eは、次のように表せます。


式1、式2から、式3が導かれます。


 
 つまり、ホコリに働く引力Fは「ホコリが持つ電荷q」と「絶縁体の電荷がホコリの地点に作る電界E」の積です。この式の意味を考えると、「引力は物体の持つ電荷が大きいほど大きく、かつホコリの持つ電荷が大きいほど大きい。そしてホコリが近づくほど強力に吸引される。」ということで、私たちの経験するところに近いといえます。
 なお、不活性ホコリの場合はq=0、つまりF=0となるので引力は作用せず、物体(製品)に吸着せずに空間に浮遊するのみで、やがて床に落下します。製品に引き寄せられずに異物不良も発生しにくいという意味で無害のホコリと言えます。

 

静電気で付着してしまったホコリを除去するには

絶縁体表面に帯電した電荷とホコリの電荷間に働く静電引力によりホコリは吸引、付着しています。このホコリを除去するために、一般的にはイオナイザー(除電器)で空気イオンを掛けながらエアブローします。すると、まずは付着しているホコリの表面の静電気と不導体の静電気の内、ホコリが付いていない部分の露出している表面の静電気が中和されます。
 しかし、ホコリと絶縁体の隙間にある静電気は+と-の電荷が至近距離で引き合い、静電気的にもバランスしているので、外部からは静電気は存在しないように見えます。つまり、静電気が無い状態に見えるためイオンを吸引する力が働かないことから、イオンを供給しても静電気は消滅しません。したがってホコリは除去できず付着したままです。
 そこで、さらにエアブローを強化すると遂にホコリは風の力に負けて移動を始めます。移動を始めたホコリの持つ静電気は片割れの静電気が居なくなるから+と-のバランスが崩れてしまいます。バランスが崩れてしまえばすぐにイオンを引く力が発生して吸引し、ホコリの静電気は消えていきます。
 また物体の方ではホコリが移動を始めると+、-でゼロに見えていた静電気のバランスが崩れ、その崩れを補うようにイオンを吸引して静電気は消えていきます。その流れで、絶縁体上のホコリを除去するポイントはイオンをかけながら強力にエアブローすることです。



 
 絶縁体に付着した異物を除去する方法を、イオナイザー(除電器)の役割を踏まえて説明しました。それでは、絶縁体ではなく、ワークが導体である場合にはホコリの付着と除去方法をどのように考えればよいのでしょうか?
 ご存じの通り、導体には静電気が帯電しません。厳密に言えば帯電しますが、ほとんどの場合、見えないまたは測定できないレベルです。また導体がどこかでアースに触れていれば静電気はアースに漏洩してしまうから帯電しません。しかし、導体にはホコリは吸着しないかと言うと、実はそうではありません。金属にもホコリは吸着してしまうのです。詳細は、金属の異物対策をご覧ください。
 
 以上のように、残念ながら製造現場に浮遊しているホコリの多くは「活性ホコリ」であり、絶縁体・金属に問わず製品や装置に付着してしまいます。そして、静電気で吸着したホコリを除去することは困難であり、強力なイオナイザーを用いて静電気を中和しながら除去する必要があります。ハンディタイプのガントリンクをはじめとするTRINCの各種異物除去装置(クリーナ)は濃密なイオンを含んだエアブローが可能となるため、従来よりも高い除塵率を実現することができます。
 さて、付着した異物を除去することはもちろん重要なことですが、実はこれ以外に異物不良を防止するための新しい手段があることをご存じでしょうか?それはTRINCの「空間除電®」です。TRINCは諸悪の根源である「活性ホコリ」を「不活性ホコリ」に変えることができる「空間除電®」を提唱し、それを可能にする世界でただ一つの対策機器「空間トリンク」の開発に成功しています。空間トリンクは、イオンを無風で空間全体に広げることができるため空間中にある全ての物質から静電気を除去します。空間トリンクを使えば、不活性ホコリしか存在しない空間を実現できるため、異物が付着しない不思議な空間を作り出すことができるのです。異物を付着させないという目的はクリーンルームと同じですが、圧倒的に簡便かつ低コストで異物不良を撲滅することが可能になりました。

 

               

 
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この記事を書いたのは
私たちTRINCは、異物・静電気対策の専業メーカーです。異物×静電気問題から解放された理想的なものづくり環境を構築するための独自技術で、現場で日々問題解決に取り組む方々を全力で支援します。 企業概要ページはこちら
 
監修
経歴
高柳 順
名古屋大学大学院工学研究科量子工学専攻卒(工学博士)。専門は量子工学・応用物理学。名古屋産業科学研究所研究員やアイシン精機(現アイシン)を経て、株式会社TRINC(トリンク)現社長。
   

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